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美味しいものを自然体で提供したいと勝手に思ってる楽山若大将の気ままなブログ

桜鯛



  臨月はもう来月に迫っていた。
  美和子は母親の里子の顔を見たくて帰省しようと思った。

  父親には反対された結婚だった。
  彼が中卒の塗装屋でバツイチ。若気の至りだったと
  里子が説得をしたが父の真之は納得しなかった。
  それでも美和子のお腹の中には小さな命が宿っていたし
  ペンキにまみれて働く彼の傍に何より居たかった。
  結局、式も披露宴もない寂しい結婚になってしまった。
  それでも美和子は幸せだった。
  お腹の赤ちゃんの成長と夕飯を用意して彼の帰宅を待つ。
  そんな毎日が幸せだったのだ。

  それでも出産間際にどうしても一番の理解者である里子に
  自分が産まれたときの話を聞きたくなったのがその理由だ。
  「ただいま」
  久しぶりに帰った実家はがらんとしていた。
  出迎えたのは真之だった。里子は外出中だった。
  「おう」
  と、そっけなく応える。まだ納得はしてないのであろう。
  居間に入ってテレビのスイッチをつけた。
  「父さん、お茶でも入れようか?」
  美和子は精一杯、平静を装った。
  「いや、いい。美和子、腹へってないか?
   寿司でも食いに行くか?」
  予想だにしなかった真之の言葉に驚いたが小さく頷いた。

  近所の真之の行きつけのすし屋だった。
  美和子も子供の頃はよく付いて行ったものだ。
  でもここ10年ぐらいはほとんど行っていない。
  久しぶりの訪問だった。
  「いらっしゃい!あれ?美和ちゃん?
   綺麗になったねぇ。あ、結婚したんだって?
   赤ちゃんまだかい?」
  立て続けに大将は続ける。
  すると、女将さんが大将の頭をはたく。
  「ちょっと、あんた!」
  「あ、しまった」 
  首をすくめる大将を見て美和子は真之がまだ納得してないのを悟った。

  ビールを飲みながら玉子をつまむ真之。
  取り立てて話すこともなく好きなものを食え、と言う。
  テレビには昼のバラエティ番組が流れていた。
  窓の外にはもうすぐ満開の桜の木々が見える。
  子供の頃よく遊んだ公園だった。
  「大将、そろそろ鯛はどうだ?」
  「谷口さん、だいぶ脂ものってきましたよ。
   卵(こ)もたっぷり腹んでるし」
  「こいつに握ってやってくれ」

   鯛の握り

  実に美しい握りだった。
  真之が話しはじめた。
  「美和子、鯛はな、産卵間際になると体力つけるために
   餌をたらふく食って肥えるんだ。美味いぞ。
   お前もたらふく食って元気な子を産め」
  それまで黙っていた真之が発した言葉に美和子は驚いた。
  「美味しい。ありがと。父さん」

  そして新緑の頃に元気な女の子が産まれた。
  美和子はその娘に
  「桜子」
  と名づけることにした。

  すし屋のカウンターには、親子の愛がある。

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楽山若大将

Author:楽山若大将
すし割烹楽山の二代目です。趣味は美味いものを食べること、美味いものを作ること、野球(観る事、草野球)競馬(能書きだけで馬券をはずすのが得意)読書、落語鑑賞etc。

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