2週間ばかり多忙だったわけは大将が入院していたからなんです。
もうすっかりよくなって退院しましたけど。
早っ!
原因は
「外傷性慢性硬膜下血腫」
まぁ簡単に言って頭ん中に血がたまったんですな。1月の雪が降った日、滑って転んで頭を強打したらしいんです。その時内出血したんでしょうな。少しずつ溜まって脳神経を圧迫してきたんでしょう。歩行障害が出てきて、認知症みたいになってきたんです。子供として心配しますわな。ここ2,3ヶ月で一気に老け込むんですもの。本人に医者に行け、と言っても大丈夫というんです。ほっときましたよ、ボクの体じゃないし。そうしたら、市場のおばちゃんに指摘されたそうです。
「楽山さん、歩き方おかしいがね。脳からきとるかもしれんで医者で診てまやぁ」
家族の言うことは聞かんのにおばちゃんの言うことは聞くんですな。市場から病院へ直行。即、入院です。しかも魚積んだまんま。
どないするねん。
仕込みはあるし、病院から電話はあるし。4月23日のことです。
それから、全部ひとりです。仕事。そりゃ新聞読む暇も無いぐらい。ゴールデンウィークにも重なりてんてこ舞いでした。いかに大将がいるとき楽してたか…。
でも案外こなせたんです。もちろんお袋はじめいろんな人の協力もありましたけど。稼業を継ごうと思って帰ってきて14年。いつか親は死にます。いつまでもいまの状態ではありません。ちょっとだけ現実のシュミレーションができた気がします。市場いって畑行って、仕込みして、店まわして。正直、以前から心配してましたが苦になりませんでした。好きな競馬もできません。それでも結構平気でした。充実してましたね。全部、自分のペースで仕事ができるし、大将がいないとできんと思われるのもシャクだし。
昔は家を継ぐのは嫌でした。「2代目」って言われるのが嫌だったんです。初代の人たちに比べてどうしても軽く見られがち。自分の力で商売してないから馬鹿にされた言い方をされることも時々あります。でも、ボクは長男。親のそばにいるのが親孝行だと思って家に入ることにしました。今は何言われようが平気ですよ。跡取りには跡取りの苦労はありますが、そんなのも自慢したって何にもなりません。
いいのよ、別にわかってもらえなくても。ボクはボクなんだし。
1ヶ月ぐらい入院かと思いきや10日で退院。ちょっと拍子抜けでした。大将が帰ってきたら
もとのぐうたらの2代目ですけどっ!
皆さんも家族の体調の変化にはくれぐれも注意してください。