
寒鰤の頭です。
実はボク、ブリの頭には強烈な思い出がありまして…。
以前勤めていた日本料理店。いわゆる会席中心のお店でおまかせ料理の店だったんです。店長(親方)が献立を作って1ヵ月スパンで内容が変わりました。献立が変わるとき(料理変えと言いました)はめっちゃ大変。各ポジション(焼き場とか煮方とか板とかね)でその月の料理のサンプルを作って親方にOKをもらったら器は考えなきゃいけないし原価は計算しなきゃならないしてんやわんや。簡単に親方はOKしてくれないし、「いじめ」みたいなときもありましたわ。
当時ボクは「焼き場、揚場」担当。ちょうど今頃だったと思います。その月の焼物は「ブリ」。仕込みも段取りも自分の担当食材はすべて管理するんですな。さばきましたよ10キロぐらいの寒ぶり。忙しい店だったし必死ですわ。頭を落とし内蔵を出して水洗い。頭もちゃんととっておきました。でも、これが邪魔なんですわ。でかいし。ある日のこと冷蔵庫がパンパンで困ってたら同僚のH君が
「佐藤君、そんもんほかったら?どーせ使わへんし」
と、言うではありませんか。実際、当時の親方は魚のアラや内臓などが嫌いな人でほとんど使わない人でした。H君にささやかれたボクはブリの頭をゴミ箱の中に捨てたんです。
会席料理の店なんで約1ヵ月は献立が変わりません。(もちろん昼コースと夜コースの献立は違いましたよ)でもたまに常連さんが月に2回みえると大騒動です。急遽、料理変えが始まるんです。まぁ2回目は昼用の献立をアレンジして対応すればいいんですが極々まれに3回目があるんです。もう大変。で、そういうときに限って急にみえるんですな。アポ無しで。
あるときその地獄の3回目があったんです。もちろんアポなし。親方は献立を組み立てるのに必死の形相。逆鱗に触れるとどうなるかわからない人だったので調理場はピリピリムード。先付けから順番に献立が決まり途中でどん詰まりになったご様子。ぱっとひらめいた感じで
「おい、佐藤!ブリの頭どうした?」
と振ってくるではありませんか!!
ありませんがな、とっくに。H君も顔が引きつってます。
「す、すみません。流しました」 (業界では捨てることを「流す」といいます)
「あーん?なんやとぉ?
流したぁ?
誰が捨てろって言ったぁ?」
はい、そのあとは鉄拳制裁です。めっちゃ痛かったです。
それから親方は口もきいてくれません。一切無視です。今なら平気のヘイサですがあの頃はねぇ。
どうやったら許してもらえるか。深夜無理いっていきつけの床屋さんに電話しました。
あくる朝。親方出勤です。板前全員雁首そろええて
「おはようございます!」
相変わらずボクだけ無視です。
着替えて親方のいすに座ったのを見計らい、ボクはもう一度頭を下げにいきました。
「昨日はすみませんでした!」
板前白帽子を颯爽と取って、海老蔵張りに頭を下げました。
親方、目が点。
だってボクの頭が青光りしてるんだもーん。
思い切って坊主にしたりましたわ。
すると親方
「お、おう。まぁええわ」
と、わらいをこらえて許してくれましたが当時付き合ってた彼女(今の嫁です)に中坊みたいと笑われしばらくは相手にしてもらえませんでした。
で、あるからしてボクはぶりの頭は捨てられないのです。
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