突然ですが、「焼けマグロ」ってご存知ですか?
マグロは実にナイーブな魚なんです。だから近年まで完全養殖が難しいとされてきました。近畿大学の水産学部がやっと成功させましたが。
環境の変化に非常に敏感でストレスがかかると興奮して自分の体温を上げてしまいます。だから釣られたり網にかかると暴れたりしてとんでもない温度になることもしばしばで60度にもなるときがあるそうです。
そうなったらマグロの身が火を通したようになってしまい使い物になりません。先日、大間に行ったときも「焼け」のマグロの話はよく出ていました。特に今年は水温が高く上がった体温が下がりにくく「焼け」マグロが多いとか。
困るのが下ろしてみなきゃわからないことです。愛明の木村クンも嘆いていましたが必死で競り落としたマグロが「焼け」だったら泣けてくるそうです。商品価値がなくなってしまい大損です。誰も保障はしてくれません。厳しい商売です。仲買の人たちはホントにリスキーな仕事やと思います。ボクら料理人なんか楽なもんです。つくづくそう思います。
先日、木村君から電話があり、焼けのマグロが出たから見に来ないか、とのこと。行ってきました。なるほど、想像してたよりはひどくなっかたですがやっぱりいいものとは格段に違う。色がくすんでいて味にも旨味がありません。木村君も頭を抱えていました。
大間で新田さんや島さんとも話したのですが、ボクの疑問は「焼け」のマグロは食べれないのか?ということ。だめなマグロは捨ててしまうそうです。あまりにももったいない。聞けば「食べれないことはない」そう。何とかならないか?と、ボクは考えたわけです。
大間で連れてってもらったマグロ料理店には「マグロステーキ」やら「マグロハンバーグ」なんかもありました。何とかならないか?北部市場の帰り道、そんなことを考えてました。
昼から、木村君から電話があり「値引きするから、引き取ってくれないか?」という話。いろいろ試してみたかったので引き受けました。 つやがなく色もボケてて美味そうじゃないでしょ?大将いわく昔はたまに流通してたそうです。最近はみんな目も舌も肥えてきたんでしょうねぇ。
いくつか試しました。一応刺身になる鮮度なので塩マグロにしてみたり、脂のないとこなのでガーリックオイルで焼いてみたり。それなりに食べれましたが一番上出来だったのがこれ
大間産マグロのメンチカツ!
これはわれながら上出来。はっきり言って美味いです。牛ミンチで作るよりもあっさりしてヘルシー。ビールのあてにもいいしご飯のおかずにもぴったり。冷めても美味いのでお弁当やオードブルにも使えます。
これなら十分商品になります。マグロ漁師が必死に獲ったマグロです。運んだ人、競り落とした木村君。みんながつないだバトンをちゃんと「お客さん」というゴールに手渡せます。
ランチでは小鉢、ご飯、赤だしをつけて1000円で提供します。
自信のオリジナル是非ご賞味ください。